2011年2月22日火曜日

【プロが教える職場の法令順守】(01) 「ネット掲示板に真実を公表」は名誉毀損罪

何げなくやっていることが、実は犯罪になる。意外に多いものです。サラリーマンの皆さんに注意してほしいものとして、名誉棄損罪があります。

「立派な経歴の持ち主を装い、エラソーなことを言っているが、その経歴は全くのウソ。とんでもないヤツなので、インターネットの掲示板サイトに、真実を書き込んでやった」。こんなケース、よくありそうです。「他人のウソをばらし、真実を伝える」。悪いこととは思えません。ましてや犯罪になるとは。名誉棄損罪は知っていても、「内容が真実であれば罪に当たらない」と思っている人がほとんどでしょう。

しかし、それは間違いです。「世間で定着している社会的評価であれば、それが虚偽のものであっても守られるべきである」というのが、法律の考え方です。そのため、人の社会的評価を落とす事実を公然と発言すると、その内容が真実であっても、名誉棄損罪に問われるのです。

ポイントは、「公然と」という語。「公然と」とは、「不特定または多数人が知りうる状態」のこと。「知りうる状態」とは、他人に伝わる可能性(伝播可能性)がある状態を指します。ですから、たとえ限られた人数に対する発言でも、その内容が他人に伝播する恐れがある状態ならば、「公然と発言した」ことになります。

インターネットがなかった時代は、文書を大量にばらまくか、多数が参加する集会で他人の悪口を言うなどしなければ、「公然と」の要件を満たしませんでした。しかしネットは、これを簡単にクリアしてしまいます。ホームページは、不特定多数がアクセスできるもの。そのため、ホームページ上に、人の社会的地位を落とすような事実を記載すれば、多くはその段階で名誉棄損罪が成立してしまいます。たとえ内容が真実であっても、またアクセスがほとんどないホームページであっても、です。

例外は、公共の利害に関する事実であって、目的が専ら公益を図ることにあり、当該事実が真実であることを立証できた場合。これは罰せられないこととされています。 (小林総合法律事務所代表=小林英明)


~日刊ゲンダイ 2011年1月8日付掲載~