2011年2月22日火曜日

【プロが教える職場の法令順守】(05) 発注者に価格を耳打ちされ……入札妨害罪

競争入札では、入札者間で入札価格や落札者を決めると犯罪になることは、前回説明しました。しかし、入札をめぐる犯罪には、発注側が絡むケースも少なくありません。

工事を発注するなら、なるべく安く済ませたいのが当然でしょう。ところが中には、価格が高くてもいいからその企業に受注させたいケースがあるのです。入札前から特定の企業にその工事のアドバイスを受けたり、特定の企業でないと工事がスムーズに進まないなどの事情が影響するのです。だったら発注者は、特定企業に受注するよう素直に依頼すればいいと思うでしょうが、そうもいきません。

公的機関の工事発注は、特定の企業を選んでの契約(随意契約)はできないのが原則。必ず競争入札にしなければならないのです。それでも発注者側は、特定の会社に入札に関する情報(最低入札価格など)を教え、その企業が情報を基に落札してしまうことがあります。

落札した企業も、仕事を出す側が入札予定価格を教えてくれたのだし、それを参考に受注したのだから、問題のあることだと思わない。そもそも発注者が承知しているのだから、罪にはならない――こう思う傾向がありますが、これは間違い。「入札妨害罪」という立派な犯罪です。まして発注者が公の機関の場合、発注者が支払う代金は国民の税金です。たとえ公の機関の担当者がよいと言っても、それで済む問題ではないのです。 (小林総合法律事務所代表=小林英明)


~日刊ゲンダイ 2011年2月5日付掲載~