2011年2月22日火曜日

【鈴木良平の視点】移籍騒動のゴタゴタ引き起こした古巣のJ清水にひとこと言いたい

シュツットガルトFW岡崎慎司の新天地デビュー戦(18日の欧州リーグ・ベンフィカ戦)は、これ以上にない「困難な状況を乗り越えて」実現したものだった。

慣れないドイツでの暮らし。チームメートの特徴も分からない。地元スタジアムでのデビューではなく、ポルトガルでの完全アウェイ戦。さらにもうひとつ、遠征メンバーに選ばれてリスボンに到着した時点では「試合に出られる」確証はなかった。

前所属のJ1清水が「シュツットガルト移籍には問題がある」とFIFAに異議申し立てを行っていたからである。試合直前にFIFAから「ドイツ協会への暫定登録が認められた」との連絡が入り、スタメンに名を連ねることになったが、よほど強靭な精神力がないと平常心で試合に臨むことはできない。それだけにベンフィカ戦の岡崎には「良くやった」と声を掛けたい。

役回りは「左サイドのアタッカー」だったが、攻撃だけでなく、激しく動き回って守備にも奔走。チームに好影響を与えた。シュツットガルトは現在、ブンデスリーガ(18チーム)で降格圏内の17位に低迷している。岡崎のようなアグレッシブなタイプは、チームを上昇機運に乗せる起爆剤としてうってつけの存在だ。20日夜には、ブンデスリーガで2位に付ける好調レバークーゼンと地元で対戦する。ベンフィカ戦でのハツラツとしたプレーを見せてもらいたい。

一連の移籍騒動にひと言。シュツットガルトにとって、清水の言い分は「欧州の常識では理解できない」モノだ。シュツットガルトにモラルに反する行為、非常識なルール違反があったわけではない。「清水が欧州移籍を容認した」選手を獲得したに過ぎない。

多くの日本人が海を渡り、欧州で貴重な経験を積んでレベルアップを図ることは、取りも直さず「日本サッカー全体の底上げ」に直結する。ドイツを中心に欧州各国クラブが、日本人選手に深い関心を寄せているさなか、今回の清水の動きは「欧州での日本人人気」に冷や水を浴びせるようなもの。清水関係者の善処を強く望みたい。 (ドイツサッカー協会公認S級コーチ)


~日刊ゲンダイ 2011年2月21日付掲載~