2011年2月22日火曜日

【プロが教える職場の法令順守】(02) 勝敗が不確定ならすべて賭博になる

賭博というと、ルーレット、サイコロ、花札など、結果がすべて偶然によって左右される勝負事に金品を賭けることだけが対象だと思われがちですが、それは間違いです。「多少なりとも結果が偶然に左右される事柄」であれば、すべて賭博の対象です。他人が行う相撲、野球、ボクシングは、賭ける当人には、勝敗は偶然以外の何ものでもありませんから、賭博の対象ですし、自身が行うスポーツや、将棋や囲碁などの娯楽競技であっても、同じことです。

これらは、技術や実力が大きくものをいいます。しかし、結果には個々の技術などが大きい割合を占めるとはいえ、多少なりとも偶然が左右することは否定できません。例えば、10回やって10回勝つほど技術が優れているゴルファーも、何かの拍子で調子を崩し、負ける可能性は否定できません。勝負には、番狂わせの可能性が常にあるのです。そういう事柄を賭けの対象とすると、賭博罪となります。

また賭博は、賭ける人同士の合意で行われることが多いのですが、それだけではありません。ゴルフなら、プレーヤー間で「にぎろう」と約束すれば賭博ですが、ゴルフコンペそのものが賭博となることもあります。参加者からお金を集め、それを賞金に充てたり、景品を買って配るケースです。コンペ幹事=胴元で、参加者は儲かるかもしれないが、損をする可能性もあるという状況に置かれるからです。

参加者から参加費などの名目で金品を集めず、幹事がすべての商品を他人から調達し、参加者も負担なしで商品が得られる状況ならば、賭博にはなりません。ただし、コンペの幹事が取引先などから強制的に商品用の金品の提供を求めたりすると、別の犯罪になってしまうことがありますので、注意してください。 (小林総合法律事務所代表=小林英明)


~日刊ゲンダイ 2011年1月15日付掲載~