2011年3月12日土曜日

【プロが教える職場の法令順守】(08) 退職後の企業秘密漏洩も犯罪になる

今やサラリーマンは、外部に知られると致命的となる会社の機密情報に接することは日常茶飯事ですが、これらを漏洩することも、もちろん許されません。

先日、ホテルの飲食店でアルバイトをする女性が、Jリーガーとモデルのデートをツイッターでつぶやき、解雇される騒動があったばかりです。従業員は会社と雇用契約(労働契約)を締結しており、賃金を得る見返りに会社に対して誠実に労働する義務を負っています。職務上知り得た秘密を漏洩し、会社に損害を与えることは、雇用契約違反です。

就業規則には、「業務上の重大な秘密を社外に漏らしたこと」が懲戒事由として書かれています。違反すると懲戒に処せられたり、時として懲戒解雇されることもあります。皆さんも、このことはよくご存じで、注意しているでしょう。しかし問題は、「会社を退職した後であれば、退職前の企業秘密を漏らすことは問題ない」と思っている人が意外に多いことです。

確かに、雇用契約義務や就業規則は、現職従業員のみが対象です。情報漏洩した人が退職していれば、雇用契約上の義務違反で損害賠償を請求されたり、就業規則違反だと懲戒処分をされることもありません。しかし、退職後でも企業の機密漏洩が犯罪になるケースはあります。「不正競争防止法」という法律です。

市場における競争の過程での不正を防ぐために設けられた法律です。販売に関する情報(販売ルート・販売計画・顧客情報等)、製造に関する情報(製造技術・パテント・開発研究資料など)、コンピューターソフトなどの情報を、企業の機密として保護しています。具体的には、顧客名簿、大口受注契約書、製品の設計図、実験データ、仕入れリスト、販売マニュアルなどを不正な手段で取得したり、これらの行為で取得した機密を使用、開示すると犯罪になります。 (小林総合法律事務所代表=小林英明)


~日刊ゲンダイ 2011年3月5日付掲載~