2011年3月26日土曜日

【プロが教える職場の法令順守】(10) 書籍のコピーを社員研修に使うと犯罪

「5ページから8ページまでコピーしてください。研修資料にします」「25部ですね」。日常的に交わされているやりとりですし、書籍のコピーなど、日常茶飯事のように行われていますが、これは著作権法違反という犯罪です。

思想・感情を創作的に表現したものを著作物といいます。著作物を創作した者は、著作権者とされ、著作物の複製(コピー、録画)等を禁止する権利、すなわち著作権を持ちます。書籍の著作権者は作者です。テレビ番組はいろいろな著作権が交じり合い、原作者や監督、脚本家など、多くの人が著作権者となるケースもあります。

著作権者の承諾がない限り、複製を作ることはできません。だから、書籍やテレビ番組の複製(コピー、録画)は、原則禁止です。コピー機やテレビ録画機器が至るところにあるじゃないか、という疑問をお持ちでしょう。著作権者の承諾なく複製(コピー、録画)できる例外も、認められているからです。代表的なものが「私的使用のための複製」です。

すべての著作物の複製を認めなければ、我々の生活は著しく制限されてしまいます。一方、個人的な使用目的による複製ならば、著作権者にそれほど経済的損失を与えません。私的使用のための複製が例外なのは、このような理由からです。どこまでが私的使用の範囲内かは不明確な部分もありますが、大まかにいうと、自分と家族の使用、親しい数人の友人との使用は、私的使用とされるケースが多いでしょう。

しかし、数人の友人との私的な勉強会ならともかく、企業の社員研修は私的な使用とはいえません。企業研修とは、営利を目的とする会社が、その営業成績を上げる目的や、社員の質を向上させ、ひいては会社の業績を上げることが目的だからです。 (小林総合法律事務所代表=小林英明)


~日刊ゲンダイ 2011年3月19日付掲載~