2011年4月21日木曜日

【サッカー日本代表・読んだり蹴ったり】(03) 岡崎慎司

兵庫・滝川二高3年時に清水と神戸から誘われた。迷っているとサッカー部の監督から「おまえはプロで数試合ほど出られたらオンの字。大学に行け」と言われて逆に奮い立った。

「地元(滝川二高の所在地は神戸)だと甘える。清水で頑張ってみせる」(本人)。もっとも、入団してみたら「通用すると思ったスピードとスタミナもプロはケタ外れだった」(本人)。当時の長谷川健太監督に「FW8番目の選手」と酷評されて意気消沈。するとクラブ幹部からは「いや、おまえは登録30選手中の30番目」とダメを押された。それが、今ではブンデスリーガ名門のレギュラーを張っている。変われば変わるモンである。

プロ2年でリーグ8試合出場0得点とパッとしなかったが、ニアサイドに頭から突っ込んでいくアグレッシブなプレースタイル、ゴールの枠をきっちり捉えるシュート感覚を武器に3年目から頭角を現していった。「岡崎の座右の銘は『一生ダイビングヘッド』です。中学時代に所属したクラブチームのコーチから『ヒザから上のボールは全部ヘディング』と命じられた。かなり無謀な指示だが、今でもバカのひとつ覚えのようにやろうとする。これこそが岡崎の魅力です。もともと勉強なんて大キライでサッカーも“頭で考えながら”プレーするのが苦手なタイプ。なので何が何でもヘディング!が性に合った。相手のスパイクの裏が見えても頭から飛び込み、体のどこかに当たって入ってもゴールはゴール――というのが生来の“何も考えない系”の岡崎にぴったりとフィット。一気に日本代表主力選手にのし上がっていった」(サッカー記者)

1月31日。ブンデスリーガ1部の名門シュツットガルト移籍が発表された。年俸1億4000万円の3年半契約。清水時代の3500万円から4倍にアップした。もっとも、契約日をめぐって清水が移籍に難癖をつけて大モメ。「ウチとの契約期間は1月31日まで」をタテに「契約期間中の移籍なので認められない。(発表しない)違約金も請求する」と言い出し、ドイツデビュー予定だった2月12日のニュルンベルク戦は出場できなかった。結局、FIFA裁定で暫定登録が認められ、同月20日のレバークーゼン戦でドイツデビューを果たした。「欧州では、1月1日から31日までが『冬の移籍期間』となっており、前所属との契約期間とは関係なく、便宜上、1月31日が契約日となる。清水は欧州サッカーの常識を知らず、杓子定規に『二重契約!』と騒ぎ立てて欧州中からバカにされた」(マスコミ関係者)

いきなり移籍トラブルに巻き込まれ、所属事務所など周囲はヤキモキするばかり。ところが当の岡崎は「なるようにしかならない。何とかなる」と平然としていた。「シュツットガルト市郊外でホテル暮らしをスタート。英語もドイツ語も話せず、右も左も分からないのに散歩に出掛けたり、チームメートに誘われると待ち合わせ場所のレストランを探して食事をしたり、ノビノビと暮らしているみたいです」(前出の関係者)。ピッチ内外で野生児ぶりを発揮。異国暮らしを堪能しているのだ――。

【おかざき・しんじ】 1986年4月16日、兵庫県宝塚市出身。中学までクラブチームの宝塚ジュニアFC。滝川二高から05年に清水入り。08年10月のUAE戦で日本代表デビュー。09年1月のイエメン戦で初ゴール。同年6月の南アW杯予選ウズベキスタン戦で日本の4大会連続W杯出場を決めるゴールを決めた。11年1月のアジアカップ・サウジ戦で3得点。自身3度目のハットトリックを達成した。日本代表の最多ハットトリックは釜本の8回。岡崎の3回は三浦カズと並んで歴代2位タイ。身長174センチ、体重77キロ。


~日刊ゲンダイ 2011年4月13日付掲載~