2011年4月27日水曜日

【サッカー日本代表・読んだり蹴ったり】(05) 宮市亮

最大の武器は「100メートル10秒84」の俊足を生かした高速ドリブル。ただ単に足が速いだけではない。身長182センチの恵まれたフィジカルを利し、ドリブルの際に「歩幅の長短」をうまく組み合わせ、相手DFを腰砕けにしてしまうのだ。

宮市はまず細かいステップでDFのボディーバランスを崩し、ここぞという瞬間に大きな歩幅をとり、一気にトップスピードに乗る。DFは体勢を崩し、宮市の後ろ姿を拝み続けることになる。「抜き去る瞬間を撮るとDFがよろけている写真が多い。宮市は“このタイミングで仕掛けたらDFが体勢を崩す”ポイントを先天的に会得している。同じように相手DFがよろける写真の多い選手は、比較するにも大物選手過ぎるが、あのレアル・マドリードに所属するクリスティアーノ・ロナウドです。彼と対峙したDFは、よろけてピッチに両手をついたり、挙句にシリモチをつく選手までいる。宮市がフィジカルを鍛え、駆け引きを覚えたらクリ・ロナのレベルに近づく可能性はある」(某カメラマン)

愛知・中京大中京高の3年に在籍していた10年8月、イングランドの名門アーセナルの入団テストに臨み、そこで名将ベンゲル監督のお眼鏡にかない、卒業前の今年1月に「5年契約」を結んだ。しかし、日本代表歴のない宮市の場合、英国の労働許可証の発給条件にある「過去2年、自国代表の試合の75%以上に出場していること」に引っ掛かり、英国ではプレーできない。もちろんベンゲルは百も承知。入団と同時にオランダのフェイエノールトにレンタル移籍させた。オランダで試合をこなしてより一層レベルアップしろ――というワケだが、さすがのベンゲルも宮市がオランダで早々に大ブレークするとは想定外だった。

オランダデビューとなったアウェイのフィテッセ戦(2月7日)で相手DF網をズタズタに切り裂き、目の肥えたサポーターの胸を瞬時にわしづかみ。1週間後の地元でのヘラクレス戦には、宮市見たさにスタジアムは今季初の超満員4万2000人に膨れ上がった。ここで宮市は素晴らしい先制ゴールを決めてみせ、「点の取れるサイドアタッカー」として欧州中に名前をとどろかせた。「中京大中京高サッカー部の監督というのが、ベンゲルがJ1名古屋で采配を振っていた時代からの知り合い。そのツテで宮市を売り込んだ。ベンゲルは“スピードとフィニッシュの精度の高さが素晴らしい。近い将来に英国で結果を残せる選手になる”とひと目惚れした」(マスコミ関係者)。17日のウィレムⅡ戦でも2得点と勝利に貢献した。

サッカーの能力もさることながら、宮市は大きな武器を持っている。それは異国暮らしへの適応能力の高さである。「中学2年を終えた春休み期間中、宮市は現在の所属先であるフェイエノールトのジュニアユース(15歳以下)で2週間の短期留学を行った。ホテルも食事もちゃんと用意され、サッカーに専念出来る環境だったが、それでも慣れない異国暮らしにストレスをため、体調を崩す選手も少なくなかった。でも、宮市だけは“オランダに生まれ育った日本人”みたいな雰囲気でリラックスしながらサッカーボールを追い掛けた。当時のフェイエノールトの関係者は『海外でプレーするために生まれた選手』とベタ褒めしていた」(前出の関係者)。ピッチ内外で大物感を漂わせているのである。

【みやいち・りょう】 1992年12月14日、愛知県岡崎市出身。中学2年から各年代別日本代表に選ばれ、17歳以下日本代表の一員としてFIFA主催の17歳以下世界大会に出場した。「18歳1ヵ月23日」のオランダリーグデビュー戦、翌週の初ゴールともに「欧州主要リーグにおける日本人最年少記録」。地元での呼び名は「リオ」。先日、イタリアの地元メディアが、セリエAで優勝争いを演じているナポリが宮市を狙っている――と報じた。


~日刊ゲンダイ 2011年4月19日付掲載~