2011年7月9日土曜日

【特別寄稿】「なでしこジャパン」に2つの重大不安 鈴木良平・初代日本女子代表監督

女子W杯準々決勝で日本代表が開催国ドイツと対戦する(日本時間10日午前3時半開始)。1次リーグ2勝1敗の女子代表は「持ち味」を発揮できないまま、これから強豪ばかりと戦う。

彼女たちの持ち味とは「速いパスワークでボールを回して相手ゴールに迫る」。しかし、1次リーグ1試合目のニュージーランド戦では、相手の肉弾戦に真っ向から勝負して大苦戦。3戦目は対戦したイングランドと同じ戦法、ロングボール合戦を挑んで0-2の敗戦となった。持ち味を出そうとするのではなく、相手に合わせた戦い方に終始したからなのだ。

原因はハッキリしている。フォーメーションに問題がある。女子代表の布陣は、「2トップを置いて両サイドにFW大野とMF宮間をワイドに配置」「守備的MFに沢と阪口」となっている。2トップと守備的MFの間に大きなスペースが生まれ、速いパスワークでボールを回そうにも選手同士の距離が開き過ぎ、効果的なパス回しができないでいる。たとえば、2トップを「1トップとトップ下」にすれば両サイド、守備的MFとの距離感も格段に良くなる。トップ下はFW川澄やMF岩渕でもいいし、サイドから宮間を持っていってもいい。

佐々木監督の選手交代にも疑問がある。イングランド戦の後半30分、守備的MFの阪口をベンチに戻した。目を疑ってしまった。この日の阪口はボール奪取、キープ、パス、位置取りなど完璧な出来栄えだった。MF岩渕と代えるべきは沢だった。イングランド相手に何もできず、ミスも目立った沢をなぜ交代させないのか? 佐々木監督が「大黒柱の沢は何があってもフル出場させる」と思い込んでいるとするならば――。そうでないことを祈るばかりだ。 (ドイツサッカー協会公認S級コーチ)


~日刊ゲンダイ 2011年7月11日付掲載~