2011年7月1日金曜日

【熱血交遊録~内側から見たJリーグと日本代表】(07) 「どうして2人はしゃべらないんですか?」 楢崎、川口の両先輩に突っ込んだ

日本代表正GK争いは、90年代半ばから「双璧」の時代でした。98年フランス、06年ドイツW杯はヨシカツさん(川口能活、磐田)がレギュラーでした。02年の日韓W杯はナラさん(楢崎正剛、名古屋)が、ベスト16入りの立役者のひとりとなりました。ボクは00年にトルシエ監督から初めて招集されて以来、ジーコ監督、岡田監督にも代表に呼ばれました。しかし、2強の牙城を崩すことはかなわず、最終的に代表歴は6試合にとどまりました。

同県人のナラさんのプレーを初めて見たのが中学1年生の時。ボクはすでに身長が180センチありましたが、坊主頭でスーパーセーブを連発するナラさんは自分よりひと回り大きく見え、こんな上手なGKがいるんだ!と驚かされたものです。どんな人?と聞かれるたびに「ナラさんは普通にいい人ですよ」と答えます。年上だからといってエラソーにすることはないし、ピッチ内外では感情的に振る舞うこともないし、とても穏やかで優しい先輩です。

ヨシカツさんはタイプが違いますね。若い頃は試合中にミスをした先輩をどやしつけたり、負けるとGKグローブを放り投げたり、感情をダイレクトに表現すると聞かされていました。でも、ボクが代表に呼ばれるようになった頃のヨシカツさんは、まるで別人でした。ただ、ヨシカツさんの周辺から漏れ伝わった「ライバル心が強過ぎてGK同士あまり口をきかない」という噂は……ウソではなかったと思います。

ヨシカツさん、ナラさんと3人だった時に聞いてみました。ボクはそういうことをサラッと聞けるタイプなんです。「どうして2人はしゃべらないんですか? 話したくないんですか?」 2人ともニコニコ笑っています。さらにツッコミを入れてみました。「黙っていると気まずくなりませんか?」 それでも2人はニコニコしていました。ぶしつけなことを後輩のボクが言えたのも、ナラさんとは長い付き合いで気心が知れているし、ヨシカツさんも後輩が言い過ぎても大目に見てくれる大人だったから。ボクもその辺の“空気”をちゃんと把握した上でのツッコミなのです(笑)。

南アW杯の前年(09年)はヨシカツさんの故障もあって、代表GKはナラさん、ボク、エイジ(川島永嗣、リールセ=ベルギー)の3人が呼ばれることが多かった。9月のオランダ遠征ではエイジがオランダ戦(0-3)に出場し、ボクはガーナ戦(4-3)に出ました。01年6月に日本代表にデビューしましたが、02年、06年、10年W杯とは無縁でした。ヨシカツさん、ナラさんにあってボクに足りなかったものは何か? ミスしても「次もお前に任せる」という信頼を得られなかった理由は何か? 現役を引退した今となっては永遠に分からないことかも知れません……。 (つづく)


▽都築龍太(つづき・りょうた) 1978年4月18日、奈良県生駒郡平群町出身。平群中から長崎・国見高。96年高校選手権8強。全日本ユース3位。97年にG大阪入り。00年シドニー五輪メンバー。03年に浦和に移籍。抜群の安定感とアグレッシブな存在感を併せ持ったGKとして05年、06年のJリーグ優勝、07年のACL優勝、同年世界クラブ選手権3位の原動力となった。01年コンフェデ杯ブラジル戦で日本代表デビュー。Jリーグ通算250試合出場。


~日刊ゲンダイ 2011年6月22日付掲載~